「牛乳を注ぐ女」。たいした絵画ファンでもない自分でも知っています。アムステルダム、ウィーン、ドレスデン、パリ・・。いくつかの街でフェルメールの作品に接してきました。いずれの絵でも窓から注ぐ光と影に女性が浮かび上がる、素晴らしい陰影を描いていると思います。フェルメールは光と影を描いた画家、などと言われています。
そんなフェルメールが我が家にやってきました。アムステルダムからわざわざ? いえ、ジグソーパズルになってやってきたのです。家内の最近の流行はジグソーパズル作り。300ピースの習作的なものをいくつかトライしてから、自分のリクエストをのんでくれてフェルメールへ。これは500ピースということでした。家内はかなり集中して、1週間かからずに造り上げたようです。額に入れて、壁に掛けました。
外周から作っていくようですが、少し嵌合が悪いピースがありそれを無理やり嵌めこんで進めていくと、必ずどこかで破綻するそうです。少しだけ嵌りが悪いけど何となく収まっている、ではダメなようです。嵌合がバッチリだと成功する、と家内は言います。出来上がったら表面に糊を塗りパズルが崩れないようにし、それが乾いたら台紙に糊を塗り慎重に貼り付けると言います。時間がかかり、なかなか気が抜けない作業に思えます。
作家・北杜夫が初めて欧州の地を踏んだ際に、その古い港町にて街の人が家の前の外れた石畳の不規則な石を右に左に回しながら気長にうまく嵌め込んでいく姿を見て、その時間感覚に「なぜとなくああヨーロッパに来たと実感した」と書いていました。(どくとるまんぼう航海記)。ジグソーパズルはそれほど大変なのかはわかりませんが、近いものがあるかもしれません。そして、そんなヨーロッパの絵画をパズルで作っていくのは面白そうだな、と自分も感じたのです。
飽きるほど、そして美術館であるならば警告の警報が鳴りそうな距離で見ることが出来ます。ジグソーパズル、印刷された紙片の集合体です。とはいえ、本来の絵が持つ精巧な光線は感じることが出来ます。描かれた女性は30代から40代の女中さんなのでしょうか。がっしりと、ゆったりとした彼女からは生命の輝きが感じ取られます。描かれているパンも、ライ麦のパンでしょうか。質感が感じられます。本物を見るのは大変ですが、こうして身近に来てくれたので、時折眺めるのです。
ジグソーパズルか・・。気が短く思い通りにならないとすぐに爆発する自分にはとてもできそうにありません。家内は今度はもう一つ300ピース。こちらはモネの「日傘の女」。そして、こんなの作れるかな?と言いながらも1000ピース、こちらはブリューゲルの「バベルの塔」。しっかり買っていました。ブリューゲルならば自分は「狩人の帰還」が一番好きですが、これは1000ピースでも見つからなかったようです。これより大きくなると飾る場所も無くなります。
300?500?・・1000?ピース数が多いな。いずれにせよこれらに取り組めるとは、脱帽しかありません・・・。
フェルメール、ブリューゲル、モネ。・・デルフト派、フランドル派、印象派。模写のジグソーパズルででもこうして好きな絵と常にお近づきになれるのは嬉しいものです。これらを作っていく製作者さんには、内心これまで以上に頭が上がらなくなっていくことでしょう。