日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

やる気スイッチ・スープカレー

北杜夫氏は自分の好きな作家だが、彼を人気作家にのし上げた1965年の書「どくとるマンボウ航海記」はいったい何度読んだのか。水産庁の調査船の船医として彼は船に乗り込み航海に出た。彼にとり初めての海外だ。スリランカコロンボに立ち寄った時の話は今も記憶に残りある料理を思い出させる。そして何故か汗をかく。コロンボで本場のカレーを食べようとレストランに出かける。出てきた料理は日本の物とは全く違い、鳥のモモ肉に赤っぽい汁がたっぷりかかっている。完全に赤唐辛子の色。しかし辛い物が大好きなマンボウ氏はこんなもんに負けるかと一口すする。口中がヨウコウロの如き。ビールと水でうがいをしては断末魔の吐息をついた。とある。口の中が溶鉱炉?断末魔という言葉は何だ?今も記憶に残る。

引っ越した地は森が豊富にある。そんな中にレストランが点在する。イタリアン、ベトナム・タイ料理、北欧料理、ハンバーガー、グルテンフリー、蕎麦屋、書きだすと止まらない。どこもこだわりの味で美味しい。値段は東京と変わらない。やはりここはリゾート地なのだろう。森のカレー屋に入った。何度も散歩して気になっていた店だった。犬連れでも入れるウッドデッキに空きがあったのだ。

スープカレーについては詳しくない。プロの店で二、三度食べたことしかない。どうやらそれは北海道発祥ということまでは知った。森のカレー屋も又スープカレーの看板が出ている。ザンギと言う単語は最近知った。理解が正しければそれは北海道での呼び名で鳥のから揚げの大きいサイズ、と思っている。そこはカレーとザンギの店、という看板だった。さもありなん、シェフは道産子という事だった。

その店のスープカレーは和風だしという事だった。出てきた皿はとろみが全くない。そこにオーブンで焼いたであろう野菜が丸ごと乗っている。カットはしているが最低限だった。ザンギ入りはそこに鳥から揚げが入っていた。

確かにそれは和風だしで魚粉が浮いているようにも思えた。スープはカレー風味はするが辛くない。大きくてまだ質感の残る野菜はただ焼いただけだからか野菜本来の味がした。甘いのだ。それがスープによく馴染んで美味しかった。ツボに入ったチリペッパーが出てきた。お好みでこれを、という事だ。辛い物が好きな僕はスプーン何杯も入れた。特別なチリペッパーなのだろうか。汗が頭頂から流れて来た。口はヨウコウロだ。断末魔の数歩手前か。マンボウ氏の記述を思い出すのだった。

入れすぎたのは失敗だがそれにしても美味しい。和風だしのカレースープが優しいのだった。

さて「やる気スイッチ」が入った。翌日に早速作った。カルダモン、クミン、コリアンダーナツメグターメリック、パプリカ、ガラムマサラ、チリペッパー。キッチンにあるだけの香辛料を適当にサラダ油で炒めそこに玉ねぎを入れた。ベースだ。これだけで良い香りがする。水を足し魚粉入りの和風出汁を入れた。目分量なのだ。今迄のスープカレーはここでコンソメを入れていた。今回はそこが違う。一方で各種大切り野菜をフライパンで焼いた。ダイコン、ニンジン、サツマイモ、茄子、ピーマン、レンコン、裏庭のフキ。じっくり火を通したものを皿に盛り上からスープを入れた。煮込むと溶ける。だから入れただけだ。タンパク質は出来あいのハンバーグを使った。ソースの無いものが良いだろう。

全て目分量、そして自分は辛い物が好き。それは自分には良かったが家内にはややつらい料理だったようだ。しかしそこそこ行けるね、という評定だった。和風だしが良いのだ。ご飯が進む、汗は出る、となかなか忙しい。しかしやる気スイッチを押してからこそのこと。よかった。

さて、まだまだやる気スイッチを押さなくてはいけない。次は何を作ろうか・・。森で出会うであろう次なるレストランでインスピレーションが湧いたら、多分出来る範囲でスイッチが押されるだろう。

プロの味、自分の味。違いは大きい。自分はスイッチを入れそれなりに作った。何度か作れば良くなるか・・。その為にはもっと森のカレー屋に通わなくてはいけないが。