日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

雨のち晴れ、そして雨

車で西に向かっていた。自分はその地にある建物に品物をいくつか届けようとしていた。しかし前日の天気予報では中部地方から東海地方にかけて雨予報で所により強い雨とあった。普段より時間がかかるなと覚悟して早めに家を出た。西には強い雨の予報があり、それは東へ移動してくる。その中を自分は東から西へ行こうとしている。

敢えて火中の栗を拾いに行くようなものだな、と考えながらハンドルを握っているとすぐに雨が降ってきた。気圧の谷へ向かっているのだからその通りだった。のどのような谷筋の道に入ると雨は激しくなり霧も多かった。霧の中に先行者のテールライトが滲んで危険だった。自分はフォグランプを点けた。誰もが慎重に走っているのだから安心だった。

分水嶺を越えて盆地を前に見渡した。普段なら山裾から広がるそれは広闊なのだが霞んでいた。雲は高くはなったがそれは真っ黒だった。慎重に西へ進むとますます大降りとなった。長い高速道路の登り坂は黒い雲に近づいていくような気にさせてくれる。目的地について荷物を下ろしたがなんと大切な箱をひとつ車に入れ忘れていた。悪天を前にして慌てて準備したからだろうか。

先ほど抜けたひときわ黒い雲が「谷」だったのだろうか?もう雨は止んでいた。更には陽が射してきた。自分は気圧の谷を突き抜けて向こう側に来たのだった。雨上がりに輝く見慣れた風景があるだけで、気圧の谷が通過したからと言って地上には特段の事は無かった。ただ東の空が黒かった。

目的地での所用も済んだ。ただ忘れ物をしたので、自分は近くまた届けに来なくてはいけなかった。「宅急便で送れば」と妻が言う。確かにそれは段ボール一箱だった。

ならば一刻も早く帰宅して宅急便扱い所に持ち込もうと考えた。再び東へ戻った。時速90キロで走っているのだからすぐに再び気圧の谷に追いついた。ワイパーを入れて速度を落とした。降りしきる雨の中帰宅した。しかし宅急便扱い所はもう営業を閉じていた。19時を回っていたのだった。

ため息が出た。今日は何をしていたのか全くわからなかった。空回りだった。気圧の谷を前方から抜け、折り返して度は後ろからそれを追い越す。そんな経験は始めてだった。しかも急いだ割には成果が無かった。徒労感のみが残った。

何かに似ているのだと思った。それは自分の日々だった。山も谷もあった。そのたびに気持ちは萎えていた。多くの出来事が自分を悩ませ心をくじけさせたのだ。しかし時に先に進むと明るい日差しを感じた。が、それも長続きはしない。

天気同様に心は鬱陶しく沈みこみ、明るく浮き上がり、また沈む。そんなものなのではないか。それでいいではないか。雨のち晴れ、そして雨。次に来るのは再び、晴れだろう。

一日に気圧の谷を二回越えた。向き合って越えて、追い越して越えた。何のための一日だったのかが分からなかった。