日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

週末の夜

山の帰り道だった。山から家に戻るのに一番便利な高速道路を使った。車で10分程度で高速出入り口が出来たのは数年前で便利なのでそこを使っている。いつもの事なのだが山の食料を大目に買い込んでしまっていた。帰宅してもサンドイッチなどの期限切れが心配だったので、ふと娘の家に立ち寄ってよって手渡そうか、と思い浮かんだ。娘はいつも自分が山の食料として買うパン、アップルデニッシュとチョコレートの入ったパンが好きだった。それがまるまる残っていた。明日あさっての忙しい朝の朝食にでもならぬか、それで10分でも余分に寝られまいか、と思ったのだ。

数か月前に結婚した娘は、運よく旦那様の社宅に夫婦として入居が出来たという事だった。社宅は殆ど自己負担が無いという事で、ゼロからスタートした新しい夫婦にとってはありがたいものだった。全くの偶然だがその社宅は自分達の家から車で20分程度しか離れていない。きわめてご近所さんになった。娘の家に近づくと、あの家で娘夫婦が暮らしているのかと思うだけで何やら心の中で花が咲く。明るく楽しい家庭だろうと勝手に想像が湧く。

自分がそうであったように、近くに住む親の干渉ほど若い夫婦にとって迷惑なものはない。それで自分も家内も娘夫婦から遊びに行くよ、あるいは来てね、と何度も言われない限りは出来る限り会わないことにしている。

玄関先で失礼しようと電話をした。日曜の夜19時だ。電話口の娘は、ごめんね、今はディスカウントストアに居るから駄目だなぁ、と答えた。全国展開している大型店舗で、圧縮展示で有名な店だ。騒々しい音楽とカラフルなPOPに満ち溢れており自分などそこへ行くと、探し物が見つからないのでイライラし疲れ切るだけだった。まこと、若者向けの店だと思う。食料品も安いのだった。

明日からは夫婦そろってまた一週間が始まる。厄介になっている社宅の所在地の都合上、娘は遠距離通勤になっていて旦那様より一時間早く家を出るという。帰宅も然りだ。平日に顔を合わせる時間少ないらしい。楽しい二人の週末はあっという間に終わるのだろう。まさに貴重な時間だった。

一昔前は日曜夜はサザエさん症候群と言われたが日曜夕方はやはり気が重いという。そんな日の夕暮れにお出かけして気分も晴れ一週間が乗り切れるのだろう。それは若い夫婦の幸福な日常に違いなかった。

やはり出る幕ではないな、と思う。何はともあれ、一つの確かな生活がそこに在るのだからそれだけで自分には充分だった。大目に残った山の食料は、家内と食べよう。妻の待つ家に早く帰りたくなった。 

娘夫婦の家はパッと咲いた梅の様に春先の明るさがある。今更自分が顔を出す必要もないのだった。



 

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