日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

群馬に久恋のラーメンあり みやご食堂・藤岡

テレビのグルメ番組や地域密着系番組。好きなのでよく見てしまう。行かなくとも見ているだけで楽しい。勿論気に入った店があればメモをして、虎視眈々と訪問機会を待つ。

ここはそんな店の一環として番組で放映されていた。何度か異なる番組で見たので、それがいつどんな番組だったかも覚えていない。画面に映し出された一杯の丼の美しい姿に心打たれただけの事だった。

長く機会を狙ったが、ようやくサイクリングの計画に組み込むこととした。

群馬県藤岡市。幹線路線である高崎線の駅からも少し外れ、関越道もずばりの出口はない。世界遺産富岡製糸場は隣町になる。藤岡と言ってあまり観光どころも浮かばない。

しかし一杯のラーメンがあれば自分は幸せになれる。憧れの麺に向けたサイクリングはペダルも弾んだ。

地元の方に何度か伺って辿り着いた。古い家並みの中にお店はあった。すでに店の外でも香しいスープと、麺を茹でる熱気が伝わるのだった。いやでも期待は醸成されるがその思いのピークはガラリと引き戸を上げる時点だろう。

ガラスドア一枚がまさに世界を分けている。扉の向こうは、良い香り、客の麺をすする音、幸せそうな顔、きびきび働く厨房の方々。幸せの空間だ。一気にそれらの光景と音、そして匂いが襲ってくるのでこちらは瞬時に飽和してしまう。

ああ、ここは思っていた通りだな。

そう思いながら麺を待つ。気張ってチャーシュー麺にした。二毛作の裏作としての小麦の生産が盛んな群馬は日本でも有数の小麦の産地。独自の小麦文化として麺類が美味しいという。

小上がりに通され、待ち焦がれて出てきた一杯。この店の麺は他店よりもずっと太く、噛み応えと喉越しを両立させていた。豚骨系でもなく魚系もさほど感じないスープは昔ながらの「中華そば」「支那そば」と冠してよいものだった。美味い、としか言えない。形容詞の不足を恥じるばかりだ。

憧れてから実際に食べるまでに随分と時間がかかってしまったが、久恋の麺に会えて言う事もない。

全く嬉しい。素晴らしい麺が、未知の麺がそこら中にある。広く食べ歩く「地理派」と少ない店を何度も訪問する「歴史派」があるとすれば、ラーメンに関してはやはりその両方を追求したくなってしまう。若い頃の様な行動力も減りなかなか地理派はむずかしいが、何かの興味につけて、世界を広げていくのも若さを保つ秘訣かもしれない。もっともあまりラーメンに熱中すると、血管年齢が下がってしまいそうだ・・・

何事も「過ぎたるは及ばざるがごとし」、ということだろう。

チャーシューが熱気の蓋をするように載っていた。蓋を開けると、ああ、宇宙が爆発する。シナチクもナルトも嬉しい限り。

地方のラーメン屋さんに共通するのは、気負いのなさ。生活に溶け込んでいる風景。しかし店外には既に香しい匂いが漂い、それが最大の呼び子になっている。