日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

顔の見える食材は嬉しい

スーパーでもよく見かける。「このホウレン草は○○市の△△さんの手作り野菜です」。値段は少し高めでも、安心して手を出せる。その袋に、オジサンなりオバサンのイラストが描かれてたら、イチコロだ。わずかこれだけの努力でその袋を選ぶのだから、なかなか効果があると言える。

なぜだろう。見も知らぬ人の名前とイラスト。しかし安心するのだ。「ああ、このオジサン、オバサンが丹精込めて作ってくれたんだな」。この気持ちは消費者には嬉しいし、実際にその味は期待を裏切らない。

先日高原に住む友人から、ご自宅の庭でとれたという沢山のイタリアントマトとピーマンを頂いた。また、伊豆に住む友人は時折自宅の畑でとれたジャガイモやサツマイモ、玉ねぎを送ってくれる。いずれも最高の食材だ。なにせ、どちらの友人もご夫婦単位でよく知っている。それぞれのご夫婦が大地に向かい、丹精込めて作っている野菜。ご夫婦の野菜作りの姿は容易に想像に着く。自分はその結果だけを頂いてしまい、いつも申し訳なく思っている。しかし実際のところ、とても美味しい。「申し訳ない」は口だけで、楽しみだし、ありがたく頂戴するだけだ。食べていると、それぞれのご夫婦の顔が浮かぶ。これ以上の食材は、ない。

今晩の夕食は何にするかな。妻とスーパーを歩く。するとピカピカ光る食材に目が釘付けとなった。「近海イワシの開き。(小田原産)」とある。ああ、やられた。これに決まり。

もちろん小田原の漁師さんに知り合いはいない。しかし小田原産とあれば間違うことなくそれは「早川漁港」を意味するだろう。ここの漁師飯は美味い。「近海ヒカリモノ」とくれば神奈川ではまずはココだろう、そう勝手に思っている。大磯や鎌倉・腰越、葉山もあるが、それなりの規模で漁協レストランもある早川は集客力も高いのだろう、この港には何かと理由をつけて出かけてきた。

小田原(早川)のイワシ…。日焼けした漁師さんが今朝にでも一生懸命水揚げしたに違いない。イワシの開きは皮がピカピカ光り、身は赤く脂も載っている。それが自宅近所のスーパーにある。漁師さんの顔は知らないが、早川漁港の風景が頭の中を満たした。

顔の見える食材は、嬉しい。あれよという間に買った小田原のイワシ。伊豆の友人から頂いた食材は美味しく食べてしまった。高原の友人から頂いたイタリアントマトとピーマンはこれが最後だ。そしてスーパーには栃木産の茄子があった。ぶどう、とちおとめ、とうもろこしと何でも農産物の美味しい栃木は、もちろん茄子も美味しい。栃木の友の顔が浮かんだ。あの友が生まれた街の茄子なら、間違えない。

全ての食材に顔が見えた。素材の味を生かすように、余り味をつけないで夕食としていただいた。勿論、すべてがとても美味しかった。顔の見える食材は、安心をもたらしてくれる。

今日は少し嬉しい事が個人的にあり、すこし酔いたかったのでビールはクラフトのエールにした。その風味に酔った。

顔の見える食材の食事の嬉しさと美味しさを形容する術を、自分は知らない。あるのは感謝と喜びだけだ。

ビールは進んで飲み干した。簡単に開けるワインも前日にまでに飲み切ってしまった。仕方なく焼酎をソーダで割った。顔が見える食材は、それぞれの製造者とお話をする気持ちになる。高原であり小田原漁港であり北関東であり。こちらも頭のスイッチを入れ替えるのが大変だ。しかし、それはもちろん「楽しい悩み」だ。

(料理)
イワシのマヨネーズ・パン粉焼き :ネットレシピで見つけた簡易な料理法。しかし、美味しい。イワシの開きに塩コショウしてマヨネーズとパン粉を付けてフライパンで焼くだけ。( https://recipe.rakuten.co.jp/recipe/1370012095/ )
・付け合わせの野菜:「顔の見える」イタリアントマト、ピーマン、茄子をフライパンで焼く。僅かの油。味付けは塩・胡椒のみ。素材の味がストレートに攻めてくる。
・ぬか漬け: こちらは家内の手製。今日は昨夜仕込んだ茄子、胡瓜、そしてセロリ。
・サラダ;千切りキャベツに塩昆布。ごま油を少しだけ。究極のお手抜き

素材で顔がわかる。これ以上美味しく嬉しいことはない。

料理は相変わらず乱雑で下手くそ。しかし素材がお手伝い。酒も進み美味しく食べられた。