散歩の際に愛犬の放尿が細く長なり、結果的に所要時間も伸びてきたことに気づいていた。彼の歳は人の年齢にすれば自分と同じくらいだ。
サクサクと軽快に歩き、お好みの電柱を見つけると左後ろ足をひょいと上げて一気に放出。どうもそれが衰えつつなのか。ここのところは倍の時間が掛かるようになった。キレが悪いのだ。更には残った三本の足に負担がかかるのか、四本脚で立ったままのときもある。
あなた「黒四ダム」のように豪快だったのにね、これじゃ公園の錆びた水栓だな、と嘆いてしまう。しかし彼も引け目に思うのか、すまなさそうな顔で見上げるので、それ以上何も言えなくなる。
膀胱の弾力も衰えてきたのだろうか、自分も最近では、いやもう数年前から夜中に目が覚めるのは尿意のみ。加えてトイレにも時間がかかるようになった。行きつ戻りつ切れ悪し。
全くこんなところに妙に年齢を感じてしまう。前立腺も腫れるお年頃なのだろう。すると彼もオス犬であるかぎりは同様なのだろうか?
滅多にないことだが、雷も来ないのに先日彼が粗相してしまった。彼は尿意を吠えて知らせるので傍に誰か居れさえすれば外に出して用足しが出来る。しかし夫婦とも外出の時は「12時間は持つだろう」というこれまでの経験則が頼りだった。それがそうもいかなくなってきた。以来長時間の外出ではマナーパンツを履かせるようにした。すると彼はひどく情けなさそうな顔をするのだが許してほしい。できるだけマナーパンツは履かさぬようにと最近は朝晩の散歩に加えて就寝前の散歩をもするようになった。
日付の変わる頃に外に出し、健気に歩いてさっと片足を上げる。終わるとそそくさと踵を返す。すまんなあ、そして、ありがとうね。
彼はこうやれば大丈夫だな。勿論さらなる老化が来るだろう。すると予防目的ではあったがずっとおむつを履いていた入院中の自分のように、施設でおむつ暮らしをしている我が父親のように、なるだろうか。大丈夫だよ、それもちゃんと対応するよ。
「それよりお父さんはどうするんだ?」と彼は大きな目をして問うてくる。そうなんだ、問題は僕だ。妻にトイレを汚すなと怒られ、もうだいぶ前から洋式トイレなら座して小用を足すようになった。若き日は黒四ではなく黒部第一ダム程度ではあったが、それでも的を外すこともあったから仕方ない。高所からの軌道は安定しないのだ。
公衆トイレなど、立ったまま用を足す便所へいくと「一歩前へ」と注意書きが貼られているのを目にする。最近は狙いマークが便器中央に印刷されていたりもする。飛ばし過ぎも困るが加齢にともなう「的ニ至ラズ。」も困りものなわけだ。
ウィットの効いた便器のオーナーならばこう貼ってくる。
「一歩前、しずく落とすな、松茸の笠」
なあるほど、これくらいのジョークで過ごしたいところだな。
我が愛犬は寝る前に追加の散歩、最終兵器にマナーパンツ。一方のワンコの主人は「一歩前へ」。え?耐えられなかったら?そりゃ、紙オムツ。入院中に毎日履いてたやつね。残りがまだ棚にあるな。
我が家の男性陣、旗色悪し。でもテレビコマーシャルでも人気アイドルが品定めしてるでしょ、大人用の紙オムツ。自分も今度カタログ取り寄せてみようか。
まあさ、当分はジョークで笑い飛ばそう。まずくなったら二人して頑張ろうぜ!日本の製紙会社だから、モノづくりに拘った良い商品に違いない。大丈夫だよ。