日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

もっと光を・不名誉な薬たち

暑い暑い。夏はたまらない。少し外に出るだけで玉の汗。帰宅したら冷蔵庫をまず開ける。すると目に飛び込んでくるではないか、よく冷えたビール。あぁ欲しいな。しかしまだ日が高い。仕方ない、冷やした炭酸水を注いで一気に飲み干し溜飲を下げる。

ビールが最重要。もちろん惣菜、買い置き品、冷凍食品、果物やまとめ買いした野菜たち。・・そんなすべてを収納する冷蔵庫は日々の生活を支える、大切なハコだ。そんなハコの扉の最上部は玉子入れだが自分は玉子があまり好きではない。卵料理の実力は認めるが、生卵の見た目と触感が苦手なのだ。よって玉子パックもまず買わない。代わりにそこには薬剤に居座ってもらっている、目薬や軟膏類。正しい保管なのかは不明だが冷暗所なのでそこを指定席にしてしまった。

しかしその薬剤類が、家族には嫌がられている。特に娘たちは目の敵にしていた。二人とも家を離れた今は家内の反応だけが問題だが、彼女もあまりこの一群には好意的ではない。

目薬は疲れ目やモノモライの薬。軟膏類は湿疹の薬。当たり前の薬だ。しかしそこにもう一種類の軟膏が加わると平和な空気は一変する。それは「白癬菌」の薬。そしてもう一つ、決定的なのが座薬そして浣腸だ、座薬と言っても腹痛の頓服であるブスコパンなら、文句も出ない。海老のように背を丸めて耐えるだけの尿路結石の発作にはこの薬。しかしそれが異なる病の薬だと急に家族の評判は落ちてしまう。痔の座薬だった。浣腸は便秘が続けば仕方もない。

白癬菌をわかりやすく書けば、「水虫」。それに「痔」、「便秘」か。ははぁ、これらが娘たちと家内に支持されない理由だったのか。シモ系はどうも日陰者だ。

しかしあまり邪険にしてほしくない。人間である以上、隙あらば白癬菌も足に棲みつくだろうし、痔になっても便秘になっても不思議ではない。しかし、これらの病や体調はなぜか陰気なイメージで人気がない。「伝染するから、素足で歩かないで」。「頼むから人目のつかないところで座薬を入れて」そう一方的に言われてしまう。この暑い夏に靴下を履けというのか。この狭い家の中で人目につかない場所ってどこだろう。便秘の苦しさはあなたも味わうでしょう・・。

痔に関しては自分はわかっている。疲労が極限に達したら発症する。便秘も手術・入院を経て体質が変わったようだから、多めに見てほしい。白癬菌は、結果的に脚が不潔なのか。ならば余り弁解の余地もない。

湿っぽい時期が続いて蒸れた靴が何度か続いたせいか痛痒くなってきた。医師は皮膚をピンセットで剥がしてプレパラートに載せ、試薬を垂らして顕微鏡をのぞく。「あぁ、いらっしゃいましたよ。白癬菌」。新たに処方された薬を、家内に隠れるように塗っている。黙って冷蔵庫の中に保管している。指の股に薬を塗るというのは、やはり冴えない動作なのだろう。

仕方のない事だが、思うに「水虫」という名前が悪い。陰気で湿気に満ち溢れた名前だ。「痔」も漢字が冴えない。冷たい寺の床に座っていたら、確かに罹患しそうだから。「便秘」だって、なぜ秘する必要があるのだろう。不名誉な病や体調。その治療薬も自動的に、不名誉な薬。どれももっとポップでファンキーな名前はないものか。日陰の病ではなく、日なたの病にしてほしいものだ。

そんな事を家内に言っても、「さっさと塗って靴下履いて」と言われるだけだ。こちらはこちらで最近少し疲労がたまり、もう一つの病もイヤーな兆候を感じている。これまた、家内がいない時に、こっそりと、処方するしかない。

ああ、日陰はなく日なたの病名、欲しいな。そしていつしか冷蔵庫の扉には、卵置き場の横にでも、それらの薬を置くスペースが標準装備されたらどんなに嬉しい事か。日陰か日なたで、病の治りも変わろうもんだ。チューブ入りの軟膏にも、砲弾のように美しい流線型をした座薬にも、イチジクを模したチューブにも罪はない。

ゲーテではないが、言いたい。「(この不名誉な名前の病とその薬に)もっと光を!」

そんなバカな想像は置いておいて、しっかり塗らないと治らないようだ。靴下も、履きます。更に他の不名誉な薬のお世話にならぬよう、繊維を取り、疲れをためないようにしないと。まぁそんなことも笑って過ごせば幸せホルモン・セレトニンが分泌され、白癬菌も直腸のうっ血も、お通じの悩みも、何処かに行ってしまう事だろう。すべて、笑い飛ばせば楽しくなる。

色々な薬があります。冴えない病も症状も彼らが無いと治りも遅い。もっと明るく行きたいところです。