日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

脳腫瘍・悪性リンパ腫治療記(18)「血液内科にて化学療法(1)」

転院先の血液内科のドクターは40代後半だろうか。患者の目をじっくりと見て話すタイプのドクターだった。入院前のガイダンスとして、私と家内二人に対して2時間以上の時間を割いて、これからの治療方針の説明と、こちらの疑問についての質疑応答の時間を設けてくれた。

・私の悪性リンパ腫に対しては、最適な療法が確立されており、私はそれに従って治療を受けること。
・この療法は欧米でも行われており、完治も目指せるということ。
・ただしこのリンパ腫は他のガン同様、治癒しても再発のリスクはあること。

という基本的な点を説明いただいた。

根底となる治療はR-MPV療法といわれるもので、これは投薬される抗がん剤の頭文字をとったもの。R-MPV療法による治療が終了したのちは放射線治療、そして再び抗がん剤。大きくはこの3ステップとなる。

・R-MPV治療: 4種類の抗がん剤を用いて、点滴・投薬を2週間かけて1クール。2週間のうち前半一週間は投薬、翌週は投薬はなく体調の確認・保全になる。この2週間を合計5クール行うという。10週間か。長い。

放射線治療: R-MPVでリンパ腫を駆逐したのちに行われる全脳に対しての放射線治療

・大量キロサイド: 放射線治療後に行われる別種類の抗がん剤の大量投与2クール投与。ドクターの言葉を借りれば「地ならし」ということであった。

後半の放射線治療抗がん剤大量投与まで入れると治療期間は約5か月に及ぶという。長い。色々なことが頭をよぎる。

仕事の事だ。折角決まった自分の再就職先の勤務は可能なのか、疑問もわく。再就職はそれまでのようなモノを売る仕事ではなく人様の支援を行うという仕事内容で、やりがいと自信を感じ、早く成果を出したいと思っていたが。5カ月以上かかる治療か。試用期間中の身にはその期間が途中で終わることはわかっていた。しかし、何もできない。

いや、脳外科で思ったこと。脳腫瘍摘出が成功した今、これ以上先が見えないことを想像して危惧しても仕方ない。九死に一生を得たのだ。そう、「お釣りで過ごす人生」なんだ。

お釣りで楽しむには、早く、自分の好きな山の見える場所に居を移し、生活を始めたい。そこは素敵な風景と森があり、美味しい空気がある。それは自分を幸いな気持ちにしてくれるに違いない。それに向けてこれからの5か月を、とにかく過ごすしかない。

前向きなドクターの話を聞いて、ファイトがわいてきた。そう、説明を通じて、このドクターは信頼できる、と強く確信したのだった。医学的な説明はわかりづらい。しかしそんな説明を、素人の自分たちにもわかるように実践してくれるところがありがたかった。必ず治して、自分の夢を実現するのだ。

もう船に乗るだけだ。ドクターの敷いてくれた治療のレールの上を走る。それしかなかった。