日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

海辺の街・逗子へ

寒気の続く季節、寒さに負けて家の中に居るのも情けない。少し寝坊した朝。思い立って湘南の海を目指した。

逗子の街並みをじっくり歩いたことはない。数か月前のサイクリングで自宅から逗子へそして市内を走り、独特なスローな雰囲気を感じた。それは心地の良いものだった。さて今日は低山歩きも兼ねてすこしのんびり歩いてみよう。冬の湘南軽ハイキングというわけだ。

前回はロードバイクで自宅から出発したが、今回はローカットのハイキングシューズがお供だ。旅の足も自転車から鉄道に代わる。終点の一つ前、神武寺駅で下車。

地図を見て分かる通り、この駅の北側は米軍居住地区。北側の改札は米軍専用のもので改札ゲートの横に看板がある。「RESTRICTED AREA. KEEP OUT. AUTHRIZED PERSON ONLY. 100% ID CHECK IN PROGRESS」。ものものしい。柳ジョージの歌は本牧を歌ったものだけど、それはまさに「高いフェンス、越えて見たアメリカ」というところだ。その先は確かに緑も多くゆったりとした土地が広がっていた。戦後70年以上経ったがいつしかこれが日常になっているのだった。

公園に入りその一角の懐かしい京浜急行の車両を見学。これが今回の行程の目的の一つでもあった。もう引退した600系が地元有志の手によって静態保存されているのだ。かつての東海道のエースは荒廃していたが、この車両を見れば子供の頃にすぐに戻れる。

逗子駅で昼食。土地柄海鮮料理の店が多い。前回のサイクリングで食べた「支那ソバ」が美味しかったのでリピートする。

ここからは駅の南側へ。暖かくなったので一枚上着を脱いだ。歩く道は急に不規則な小径となった。家並みは古いものもあれば、新しいものもある。古い家を改造したカフェ、新しい洒落たカフェもさりげなく店を広げている。綺麗な英語が聞える。米軍関係者がそんな小道を散歩だ。新しい家はログハウス風なものもあり、それが妙に家並みにマッチしているのだった。小径は真っすぐではないので歩くにつれ風景は変わる。そして汐の香りも漂って来るのだった。

次の小径では、サーフボードハウスがある。ウィンドサーフィンやボディボートのショップも目立ってきた。民家のガレージにボードやカヤックが載っている。そんな家の外壁には、シャワーが付いている。 駐車場には小粋な古いフィアットメルセデスではなく、フィアット。空気はゆっくりと流れ、ハマシギだろうか、小さく羽ばたいてボードの向こうに消えていく。

目指す今日の山は目の前だ。小さなお稲荷さんから右手に上り坂。急坂の果てに立派な低層集合住宅。山道に入り汗をかかぬ間に北側からアプローチしてきた車道が作る駐車場に出た。山頂へは少し歩く。そこは逗子市の小さな動物公園になっていた。息を整えるまでもない、披露山海抜92メートル。目の前に江ノ島。富士山は低い雲に隠れていた。アマチュア無線機を取り出しCQを出すと3局と容易に交信できる。この程度の山でも見晴らしが良いからだろう。これで山頂からの無線運用という月最低一回の行事は果たせた。

下山は往路をとらず逗子海岸に向けて谷を下りていく。すぐに寒椿の咲く小さな谷となる。親子ずれが湿った斜面を掘っている。クワガタの幼虫がいるという。谷はすぐに小さな谷地となり海沿いの国道に出る。そばのレストランの駐車場には250CC単発バイクの一団がいる。みんな何らかの手を加えていて、カフェレーサーっぽいもの、サイドカーにしているもの。見ていて楽しい。もちろん拘りのオーナー氏と話すともっと楽しい。本当に単気筒バイクの好きな連中ばかりだ。乗っていた自分もその心地よさはよくわかる。

再び北に足を向け、小径の街並みへ向かう。・・ゆったりとした時間が身を包む。

海が近く温暖な地。マリンスポーツなどを楽しむ人が多い。「汐」の香りが運ばれてきて「外国」が街の中にある。これが逗子の独特な空気感を作っているのだろうな・・。何かに追われて焦る必要もない。「時間を遊ぶ」人たちの住む街。実際に住んでみると、週末や行楽期には都心からのクルマや行楽客に溢れ、広くはないこの街はスローではないのかもしれない。しかし、根本は変わるまい。

自分は海派ではなく山派。マリンスポーツは怖くてできない。だけど山派でも、こんなスローな空気を味わい、いや、創り出し、時間を遊ぶことは出来るはずだ。だから逗子は、何らかの生活のヒントをくれるような気がする。何かに行きずまたっら、この地を訪れるのも、ありだろう。

京急の「逗子・葉山駅」から始発列車のクロスシートに座り、住んでいる町へ帰る。4時間程度の小さな旅。スローな時間からいつもの時間へと戻るのだった。

(2021年1月29日・歩く)

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汐の香りに包まれ、時がゆったりと流れる街