日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

記憶が消える前に・・・私の東叡ランドナー

SNSで私のランドナーの師匠が先日ご本人の愛車を紹介されていました。

師匠と勝手に呼んでいるお方は、山の大先輩ですが、私がランドナーをオーダーフレームで作るにあたり、色々助言を下さった方です。また実際に実車を拝見しに行き参考にし、かつ、貴重なパーツも、譲っていただいたのです。

今はランドナーというキーワードで調べると色々なカタチの車が出てきます。スローピングフレームの頑丈なパイプでゴツゴツした車もランドナーとカテゴライズしているサイトもあり、その違和感に激しく戸惑います。あれはツーリング車。フランスの香りも皆無。ランドナーと呼ばないでほしい。

やはりここでは、70年代のフランス車の繊細で美しいフォルムを追ったサイクリング車・ツーリング車、をランドナーと呼ぶようにします。700Cタイヤの快走車であるスポルティフも広義ではランドナー類と考えています。いずれにせよカタチで言えばランドナーの三要素を満たしていること。ホリゾンタルフレーム(クロモリ鋼)、ドロップハンドル、泥除け。ぱっと見の外観を支配するこの三点を満たすことによってランドナーの姿になると考えるのです。ここから先の拘りはマニアの世界。人の嗜好によりますので多様です。古いフランスパーツに拘る方も居れば、現代のパーツで組む方もいます。タイヤサイズも26HE、650A、650B、700Cと各人の思想を反映するでしょう。すべてアリだと思います。100人いれば100の事なるランドナーです。

師匠は私がフレームを発注した埼玉県川口市のフレームビルダー・東叡社の職人さんの一人と友人でもあり、また、かつて人気のあったサイクリング雑誌の編集者もやられていたというランドナーとその業界に詳しいお方です。拝見した実車は、まだ未舗装道が多かった1970年代から数々の峠越えや林道走行をこなしてきた風格が漂う筋金入りの現役車。当時のランドナーと言えば当然でもあったフレンチパーツで固められた、「ラ筋の人」なら涎ものの車です。

そんな一台と同じ工房で作ったフレームですが、自分のは何か迫力ありません。・・自宅から宇都宮まで、房総、御前崎しまなみ海道などいろいろこの車で走りましたが、まだ実車として、もっと走ってくれ、という事かもしれません。作って10年弱程度、確かにまだまだこれからです。

初のオーダーフレーム。当然気合入りまくりで、それまで乗ってきたサイクリング車を参考に、いろいろ考えたのです。ただ経年と共に、作った当時のコダワリなどの詳細が記憶の彼方に消えかけています。そこで記憶が辿れるうちにまとめてみました。そう、師匠に触発されて我が車を振り返るのです。

制作時のコンセプトとしては「オーソドックスなランドナーを現代パーツで」。フランス車のイメージを残しつつ、現代のパーツで性能を重視しようというものでした。乗り手である自分が、「見て美しく思え、乗って安心できる車」なのです。

●フレーム:
東叡社スタンダードフレームサイズ520 パイプはカイセイ022。

スタンダードとはいえ、リアブレーキ用のブレーキワイヤー取り回し、ボトムブラケットへの対応、ダイナモ対応、など細かいことは注文できます。下記のコンセプトは構想段階から決まっていたのでそれをピンポイントに明記を求める東叡社のオーダーシートに感銘しました。同社へのオーダーシート(画像添付)に記した主な内容です。
・ラグレス (東叡社のフィレット溶接の美しさに惹かれていました)
・センタープルブレーキ対応
・リアブレーキワイヤー トップチューブに内蔵(右上から入れて左上に出す)
・他にも、ボトル台座、ポンプペグ、チェーンフック、ワイヤーリードなど痒い所に手が届く的な個所の指定をしていきます。すべてに自分の考えを織り込めます。

●フレーム色: 
・ダークメタリックグリーン
と簡単に一行オーダーシートに書いただけです。凝る人はPantone番号指定でしょう。自分は数えきれないほどランドナーフレームを作ってきた東叡社のセンスを信頼しました。ダークグリーンランドナーでも人気のある色ですので。

●タイヤサイズ:
・650A35 
フレームの設計に大きくかかわるタイヤサイズ。欧州で乗っていたランドナーもどきは700C28のタイヤでした。700C、悪くないです。しかし165センチの身長の自分にはやや大きいという印象でした。とはいえMTBの26インチも少し小さく感じたのです。そこでランドナーには自分は軽快車(いわゆるママチャリ)と互換性のある650Aとしました。650Aならどこでもタイヤもチューブも手に入るのが最大の理由です。とはいえその幅は38㎜ではなく35㎜とし軽快さを狙いました。バルブはスポーツ車なので軽快車のイギリス式ではなくフランス式。
尚650Bタイヤを巡る環境はその後数年で大きく変わりました。フランス車と同じ大きさの650Bタイヤの復権でした。様々な種類が出てきました。今なら、32ミリ程度のタイヤ幅がある650Bにしたと、思っています。

●走行系 :
・フロント チェンリング 48-34-24(Velo Orange)
・リアスプロケット 13-26カセット 8速(シマノ
・シフター 8速インデックス (シマノWレバーSLR400)
・前変速機 シマノSORA
・後変速機 シマノTIAGRAショートゲージ
・ペダル シマノPDA520 (片面SPD

貧脚なのでローローでギア比1:1かそれ以下を目指した結果の構成です。ギア比1:1を切りました。フロントはTAやストロングライトに惹かれますが現代パーツに。「それらしい」デザインだったアメリカのベロオレンジ社の製品。

フロント変速機はこの車の前に乗っていた丸石エンペラーのモノを移植してもらいました。クラスとしてはSORAでしょうか。プラスチック主体の安っぽい作りですが変速性能は確かでした。勝手がわかる変速機だったのでもう少し上のグレードにしても良かったのですが迷わず移植でした。リア変速機は少し頑張って、Dura-Aceの7400番台を装着しフリクションのWレバーで動かしていました。しかしこのディレイラーにはワイドレシオの自分の自転車には荷が重かったようです。変速性能に納得がいかず、現在はTiagraのショートゲージを装着して、インデックスのWレバーで8枚カセットを動かしています。

ペダルは残念ながら三ヶ嶋シルバンツーリングではないのです。ビンディングシューズの性能も気に入り、ここは現代の技術、シマノビンディングペダルなのです。街乗り対応も考えてSPDは片面だけ。

●制動系 :
・DIA-COMPEのDC750
見た目のカッコよさからカンチではなくセンタープル。国産品ですがブレーキに貼られている赤いラベルが好きるMAFACより気に入っています。利きはカンチにも劣りません。

●リム、タイヤ、ハブ、泥除け:
・リム ARAYA KP80
・タイヤ パナレーサ650A35、オープンサイド。
・フロントハブ Normandy
・リアハブ SunExceed
・クイック Simplex
・泥除け 本所、分割式

タイヤとリムは650Aでしたので飴色オープンサイドでシングルのパナレーサとアラヤです。ハブはラージフランジ。フロントはフレンチパーツ、リアはサンツアーの復刻版(サンエクシード)。クイックはフロントハブ同様にフレンチパーツ。ランドナーの系譜をひきつぎSimplex(サンプレ)です。愛車についている部品の中で一番気に入っているものです。
輪行は省力化とエンド保護観点からフォーク抜きで後輪は装着したままとすることを考えていました。とはいえ、車の中にばらして積むこともありますのでリアの泥除けは分割式にしました。両国駅そばの自転車店で調達。テールの反射板もそこで調達。これはアルミの削り出しで高価ですが良い質感のものです。

●電装系:
ドイツで作ったサイクリング車のダイナモを使いたくてダイナモ台座をリアステイに取り、フレーム内配線でフロントキャリアの砲弾ライトを点灯するようにしました。ライトは、師匠からソービッツのピン玉を頂けると言われましたが(師匠はJOS)恐れ多くて辞退させていただき、ドイツで作った車につけていた砲弾ライトがつくようにフロントキャリアをフレームビルダーさんに作ってもらったのです。しばらくダイナモ発電は問題なかったのですが、やがてダイナモの調子が悪くなり、考えた末に、二次電池によるLED電灯を光らせることに方針を変更しました。単三のニッケル水素電池エネループ)を電源とし、砲弾ライトの電球はLEDに変更しました。白いですが、意外に明るい電装系で、納得しました。リアの電装は、ハンドルのバーエンドに嵌める、ボタン電池で駆動する赤色LED灯を使っています。

●ハンドル・ブレーキ・サドル:
・ハンドル 日東ランドナーバー
・ブレーキバー シマノ600
・サドル BROOKS B17
・シートピラー グランコンペ

ハンドルはドイツで乗っていた車のもの移植。ブレーキレバーはこの車のために、と、師匠から頂いたシマノ600。輪行にも対応しておりとても気に入っています。ただそ飴色の握りゴムは、ダイアコンペの黒ゴムに変更しました。シュラックニス仕上げにしたバーテープとの色合いからです。サドルはドイツの車から使っていたブルックスです。もう使って20年近い。今でも時々保革ワックスを縫っているのです。お尻に馴染んでいます。シートピラーはグランコンペ。やぐらを逆さまにしてサドルに装着しました。「やぐら返し」の理由はもちろん見てくれ重視。シートピラーが長く見えるし装着部のスマートではない箇所をサドルで隠すためです。

記憶の残っているうちに、愛車の詳細を期することが出来ました。フランス車の雰囲気を残しながら現代パーツを取り入れて、漕ぎ手である自分にとって一番使いやすくする、そんなコンセプトは実現できているのです。頭の中には、これで旅する計画が沢山あります。想像でしかなかったこの車を実車に持っていくまでのお膳立てをしていただいた師匠、そしてしっかりとしたフレーム、そして素晴らしい車を組み立てていただいたフレームビルダーさんと自転車屋さんに感謝致します。

自転車の写真を撮るに際して、埃と油汚ればかりの愛車を見て、自責の念に駆られています。コイツとの時間はまだまだこれから。もっと年輪を刻んであげたい、そう思って愛車を磨くのです。

(2020年10月20日・記)

 

私のランドナー。泊りのツーリング、日帰りの輪行、近所のポタリング。なんでも出来てしまうスローな旅の相棒です。早く走る必要もないのです。ただただサイクリストの旅心を刺激してくれ、疲れない走りを提供してくれるのです。

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