日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

ランドナーのパンク修理 ~ DNAの繋がり

チューブと言っても頭に浮かぶ単語は様々ですかね。オーディオやアマチュア無線の人は「真空管」になりますか。自転車の人は「チューブ(これ以上和訳できない)」ですね。

先日久々にランドナーに乗ろうと廊下から引っ張り出しました。頭の手術をすると、平衡感覚はなかなか戻りません。自分の好きな遊びは残念ながらこれを求めるものが多いです。山歩き、山スキー、そしてサイクルツーリング・・。とはいえ体の中からランドナーで走りたいという気持ちが湧いてきたのは術後としては良いことだと思います。

で空気を入れなおて走りだすと、あれれ、後輪がおかしいぞ。 あ、思い出した、昨年11月の群馬県前橋・桐生のサイクルツーリングの途中から、後輪空気が抜けてきてた。あの時はだから3キロ程度走るごとに手押しポンプで空気を入れてなんとかしのいだのです。帰宅途中でランドナーをビルドしてくれたご近所の自転車さんを挨拶がてら訪問したら、「それはごくごく小さな穴が開いているんですよ。」とのことです。あ、次回乗るまで直しておこう。 しかし、直っていなかった。そうか、病気もあったから、それほどまでコイツに乗っていなかったのか・・・。すまなかった。

これまでもパンクは散々経験しましたが、それはかなりラジカルにやってきてました。最悪はパリ市内で、路側にはガラス小片も妙に多く石畳もでますね。700cc23のタイヤを履いたロードバイクにはああいうのはきつくて、パリにいたころはやたらとチューブを交換しました。なので、こんなにゆっくり進行するパンクは初めての経験でした。

このランドナーを作ったのはもう10年になり、かなり輪行や車に載せて走っていますが、パンクは一切なし。タイヤが650A35と700c23とは比較にならないこともありますが、さすがタイヤもチューブもパナレーサーと思っていました。(700Cはフランス車なのでタイヤもミシュラン、チューブはフランスの量販店で売っている謎の製品、GO-SPORTオリジナルでした・・)ミシュランもパナレーサもオープンサイドのタイヤなので同じ条件ですね。

そんなことで、実はこのランドナーのパンク修理は初めてです。ビードが思ったより硬かった。ミシュランとは違うな。ドイツで作った700C(ランドナーもどきに仕立てた)はさすがにタイヤ・チューブともにシュワルベがついていました。これも固いビードだった。タフな下回りはさすがドイツと唸りました。これは一切パンクとは無縁でした。(この700Cは今のランドナーの資金のために売却した)。チューブは予備のパナレーサに交換。再び固いビードに苦労しますがまあ当たり前に交換終了。それが好きで拘って装着したセンタープルブレーキですが、太鼓をはめる時の親指は痛いですね。簡単にブレーキワイヤーが外せるカンチブレーキでもよかったかなと、少し思ったり。

ぐるりとご近所一回り。何事もない、ああ、これだよ。クロモリフレームのしなりを感じる走りです。

古いチューブはこれまでは消耗品と割り切って捨てていましたが、今回は、久々にパッチをはるか、と穴あきカ所を探り出します。バケツに水を入れて泡が上がってくる箇所を探るとすぐに見つかりました。バルブのすぐ下。なにか力が入ったか、形状からしてリムをかんだモノではないな・・。さて、パッチ、あれ。ない。 しばらく全く使っていなかったので行方不明です。あとで100円ショップに買いに行こう。

しかしこの風景、とても自分に馴染みあるな・・。目を閉じるといつもバケツの中に張った水から泡が出ている・・・。

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・・そうだよ、僕の祖父だった。祖父は僕の郷里でもある瀬戸内海の町で自転車屋をやっていたのです。毎夏は長逗留しましたが、ほぼ毎日見ていた風景です。「何やっているの?」とまで聞いたことがあります。バケツから出る泡で、穴を探すというひどく原始的なやり方が役にたっていることに感心した記憶があります。そんな祖父もとうに脳梗塞になり、右手が利かなくなり、家業の自転車屋もいつの間にか閉めていました。子供心にも気の毒に思えたし、油で汚れた祖父の手指が見られなくなったのは寂しかったな。

バケツに入れた水でチューブの穴を探して、ああこれかと喜ぶ。そして手を取り出してみれば同じく油まみれで真っ黒な自分の指。やはり寂しいし、お爺ちゃん、天国で元気にいるかな、と思ったりもする。その孫もいつか歳をとりお爺ちゃんと似たような脳の病になり、そして病から戻ってから貴方と似たようなことをして楽しんでいますよ。

・・・ねぇ、元気にしているよ。

DNAのつながり、って確かにあるんですね。なにか、とても嬉しい。

(2021/06/05記)