少し離れた場所に住む友人夫妻。所要で近所まで出かけた。出かける直前にその旨連絡したら今日はご不在ということ。しかし友人宅倉庫に預けているものを取りに行く必要があり立ち寄ったらドアノブに倉庫の鍵番号と共にメッセージがあった。
「今日は仕事先です」。
所要は2時間ほどで済んだ。せっかく種明かししてくれたのだから、お顔だけでも拝見しよう、と、妻とそう話して車を走らせた。
友人夫妻は隣町の手作りのベーコン屋さんをお手伝いしていた。工房の横の建屋がベーコン屋さんの家。そしてそこにはウッドデッキで寛ぐ3、4人の方々。友人を呼んでもらおうとしたら店の方がわざわざ工房まで足を運んで、呼んでくれた。
3、4人のはずがいつしかベーコン店ご夫妻に友人ご夫妻。そして我が家は2人と犬1匹。ウッドデッキのテーブルを囲んで、都合10人近くなってしまった。
卓上にはチーズフォンデュ鍋が乗っかり、楽しいランチタイムか茶話会のようだった。会話の腰を折らぬか心配だがそれも、杞憂だった。話は直ぐに再び回り始めた。
手作りのルバーブをジュースにして、冷たい炭酸水で割っていただいた。あれよと思うまにエスプレッソが出てきた。予期せぬ訪問者にも関わらず、歓迎して下さったのだった。お店の「うり」迄ご馳走になった。チップの薫りがよく効いた絶品だった。焼かずとも充分に美味しい。ベーコンとは燻製、改めて思う。
澄んだ空気の下、爽やかな風に吹かれ、山を眺めて森を見ながら笑い合う。手作りの時間を友と過ごすのは楽しいだろう。自分の友人夫妻を含め多くは喧騒の都会を離れこの地に縁を得たと言う人たちだ。
見知らぬ人達と知り合って、人の輪が広がっていくのだろう。小さな繋がりが少し大きな輪になる。十人単位ならばそれは小さなソサエティー。人は一人でも生きるが、何らかの社会に属するとそこに喜びを見い出すのではないか。小さなものでもいいし、いくつあってもいい。
長年の友人と、知り合ったばかりの方々との輪に期せずして加わって、心の中が少しばかり暖かい。それは淹れたての珈琲のせいばかりではないだろう。森の珈琲タイムはとても美味しい一杯と一皿だった。