ゆっくりとランドナーを走らせる。目的地の港町は近いのか潮の香りがする。一時停止、踏切だ。
それは目を奪う風景だった。単線のレールがまっすぐに伸びていく。そしてそこから一本の単線レールが頼りなさそうに分岐していくのだった。
単線とはいえ前者のレールはしっかりした太いもので、60Kgレールだろう。頭上にはしっかりとした架線がある。特急列車も運行される路線だけある。一方の分岐線はか細いレールだ。40Kgレールだろうか。架線のない鉄路は、注意しないとその存在を見落とすほど風景に溶け込んでいく。一、二両限りのディーゼル車が一日数本、走るのだろう。
分岐線を目にすると、ああ、ここが分かれ目なのだな。と思う。まっすぐ進めば都会の街へ、分岐すれば山間の静かな集落へと鉄路は旅人をいざなうのだろう。
登山道でも、サイクリングのルートでも分岐点がある。予め行き先を決めているのなら迷うこともない。しかしどちら経由でも行ける時やあても無く彷徨うときはどうなるのか。見知らぬ風景を想像してどちらかを決めていく。この先に何が、どんな出会いがあるのだろうか、と。
分岐があれば必ず停まって地図の確認。選ばれなかった道への想いを馳せながら、選んだ道を進んでゆく。結局それは日々何かを選択をしていく毎日の生活や、さらに言えばその積み重ねである人生と変わらない。
山歩きもサイクリングも常に分岐。踏切にて眼の前で別れていく二本の単線を目にして、さてこれからも分かれ道を選ぶ日々だなと考える。どちらの道を選んでも、後悔は無いはずだ。多少遠回りでも構わない。やり直しも自由自在だ。
ランドナーバーを握り直し、今日の目的地の港へと踏切を後にした。
PS:自転車で風を切り、汗をかいて登山道を歩く。そんな自分の好きな旅の風景への憧れが高まる。友から教わった唄を大切にしている。空気公団「旅をしませんか」
・https://www.youtube.com/watch?v=Kbq359vXbR8
・https://www.youtube.com/watch?v=ejq3HoHCIX8(中国語で歌われる世界と、台湾の優しい風景に惹かれる。山崎ゆかりさんご自身も出演している。)