冷凍の袋詰め。袋を開けるだけだから気楽な食材。しかしざっとフライパンにあけて炒めると、何と水気が出てくる。具から出た白い汁が満ちてくる。
ああ水出てきた。火力不足なのか。もっと強火で長く炒めれば水気も飛ばぬか。そうやっても水分は大して飛ばないし何よりも具が小さく縮こまるだけで、ちっとも美味しくない。海老など1/3程度になってしまう。しかも独特の臭みもある。そんな冷凍シーフードミックスはいつも苦手な食材だった。シーフード系のパスタを作るとなれば、そんなこともあり殻付きアサリか少し手軽に茹でたアサリで、ボンゴレビアンコか、ボンゴレロッソばかり作っていた。冷凍食材には手を出さなかった。
殻付きの貝や海老の入った見事なペスカトーレは作ってみたいが食材も敷居が高そうた。シーフードミックスは手頃だが不味いんだよな…、などと思っているとテレビでやっていた。シーフードミックスを美味しく調理するコツ。下ごしらえが必要らしい。
なんだ、みんな悩んでいたのか…。
シーフードミックスにはわざわざ薄い氷が具材を包んでいる。あれは付着したのではなく鮮度維持のためにあえて付けてあるということだった。そのまま料理に使うとあの氷が悪さをするらしい。炒めたときの水分も独特な臭みもそこから来ているということだった。そこで海水に近い濃度のぬるま湯に30分程度具材をそのまま入れて解凍、水気を切って布巾で拭き取ってから使うと、嫌な水分も臭いも出ないという。
やってみて驚いた。表面の薄氷を落としてしまうだけで新鮮な具材の出現だ。炒めすぎることもなく具は柔らかいまま火も通った。皆さんは多分こんなことはご存知なのだろう。しかし自分にとっては長年の問題も解決して嬉しい限りだだった。
早速野菜と炒めてオイスターソースと中華スープの素を水溶き片栗粉で餡にして、あんかけ海鮮焼きそばとして皿に盛った。麺は中華麺の固ゆでをフライパン弱火でじっくり両面に焦げ目をつける。シーフードミックスは余り火を通さぬように炒めの最後に投入し、身が縮まぬようにと火入れ加減には留意した。うそのように柔らかく臭みもなく、美味しい海鮮焼きそばだった。細君の及第点をも得た。
そして今度は2日続けてパスタに使った。アラビアータ風のトマトベースと、アリ・オ・リオ・ペペロンチーノ風で。全くなんとかの一つ覚えだが、折角得たノウハウは身に染みるまで叩き込みたいところだ。
どれも細君は「美味しい、海老もイカも貝も、ぷりぷりして柔らかい」と言ってくれる。ありがたくお墨付きを頂戴してしまった。さて、これからは、もう少し付き合ってもらうか。ただ肝心のレパートリーが少なすぎる。色々、考えなくてはいけない。一番簡単そうなのは、アヒージョだろうか。では美味しいバゲットが欠かせない。付け合わせはモッツァレラを買いカプレーゼと行くか。するとワインも重たい赤がおいしそうだ。いや、明日は仕事もないな、昼飯に食べるとするならば、カジュアルに、冷やした白でいくか。
シーフードミックスの下ごしらえ方法を知っただけで広がる夢想の世界。今から楽しめばよいのだから、しばらくは買ってしまいそうだ。