日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

手作りの贈り物 サコッシュ

手作りの贈り物。遠い昔の話しか浮かばない。

高校や大学生の頃、交際相手の女性から手編みのマフラーを貰う・・漫画やドラマで見るシーン。そんな世界には無縁だったので余計に憧れたものだった。・・。ああ、でもあるな。毛糸の手袋だった。指にフードがついてミトンのようになる優れものだった。その手袋はその後の時間の経過とともにいつしか無くしてしまったのだ。しかしそれを今製作者に詫びてみても「えぇ?覚えてない。そんなモノ、作ったっけ?」と言われてしまうのだった。

手編みは作り手の思いをも編み込む、というイメージもあり意味深でもある。そんな特定された個人に向けた「想いで、重い」ものでなくとも、今フリマやネットでは「手作り」のアイテムが花盛りだ。駅前のフリマを覗いてみると沢山のアクセサリーや箸置き、インテリア関連小物、革細工など、手作りのアイテムが並んでいる。観光地の道の駅などでもかならずその地域の方が手作りされた品々を手にすることが出来る。

同一な品を大量消費していた時代はとうに終わり、進化したネット・SNSなど、そしてそれに伴い多様化した販路で、誰もが自分の表現したいモノを自由に発表しそれをカタチにして世間に示し、売ることが出来る、そんな時代を改めて感じる。

以前の会社の先輩にお会いする機会があり、思わぬものを頂いた。「サコッシュ」だった。鞄や肩掛け袋。そんな意味のフランス語。日本でも数年前から自転車・ロードバイク乗りに人気のアイテムで、それを自作する方も多い。

先輩もご多分に漏れず自転車乗りで、40年以上も昔のイタリアの鉄フレームで組んだロードバイクを綺麗にメンテして乗られている。高低差の大きな、アプローチの長い峠越えも楽しまれる。本格的なサイクリストだ。その方は自分が入社した頃はすでに英語を達者に使うバリバリの中堅社員で、その仕事ぶりには憧れたものだった。またアウトドアが二人とも好きで、当時流行り始めたMTBでともに野山を走りキャンプを楽しんだこともあった。そんなお方もそろそろ会社生活をどうするか考えられているとのことで、何か将来を楽しめるように、趣味と実益を兼ねられるようにと、自転車に関連したアイテム、「サコッシュ」の自作を始められたという事だった。

先輩との再会の席で「治癒し再就職したお祝いです」と手渡され、なにやら照れ臭かった。勿論嬉しいが、自分の状況はそんな頂き物を貰うほどの大した話でもない。

頂いたサコッシュ。先輩の手による自作品。香川県の醤油醸造所の前掛けを利用して作られたものだった。編みものではなくとも、間違えなく先輩の時間とエネルギーがカタチとなり袋になったのだ。藍染の前掛けも自体もお洒落だし、留め具として使われている古銭や木の樽を模したボタンも雰囲気が良い。縫製もしっかりしている。ご本人は「下手な素人の針仕事」とご謙遜。いえいえこれなら間違えなく「ネットやフリマで高く売れますよ!」と声を大にして言いたい。

その「再就職」した職場に、80年代のフレンチロードバイクで先日出勤した。肩にはもちろん「頂き物のサコッシュ」だ。職場に着くなり、20代の女性職員が、「そのサコッシュ、カッコいいですね!」と言ってくれた。自分はただ頂いたものを使っているだけ。先輩にお礼を伝えたいが、どんな形で「お返し」が出来るのかと思うと悩ましい。勿論このサコッシュ、破れたりほつれたのならすぐに補修する。そう、頂いた「手作りの贈り物」、「ありがとうの気持ちを持って使いづづける」事が一番のお返しなのかと思う。

先輩の、自称「素人の針仕事」の次回作を見せてもらうのが、楽しみで仕方がない。

前掛けを綺麗に細工されたサコッシュ。ボタンもお洒落です。醤油醸造所が自分の生誕地・香川県と言うのも嬉しい話です。