日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

唐松と白樺の高原で聴くチェンバロ

八ケ岳高原音楽堂へ行ってきました。海抜1600mの八ケ岳東麓、カラマツやシラカバの高原の中に立つ、木で作られた素敵な音楽ホールです。

手にした今シーズン夏のプログラム。例年通りかなり著名なアーティストが来訪します。クラシック音楽ではスタニスラフ・ブーニン鈴木雅明、ジャズ・フュージョン界では渡辺貞夫、ポップス界では矢野顕子八神純子大貫妙子小野リサ、森山良子、宇崎竜童など・・・。クラシック以外でもかなり自分にはストレートにハマる方々がここで演奏会を開くのです。木のホールですのでポップス系の方々はアンプラグドなのでしょうか。とても興味あるところです。

今回の自分の目的は、チェンバロ・コンサート。このホールにはカラマツで作られたチェンバロがあるのです。複数回に及び何名かのプレイヤーでそれを演奏するという企画です。今回は東京芸大院生の演奏でした。

チェンバロの生演奏を聴くのはこれが初めてです。海抜1600メートルというだけあり空気も薄く音の伝達に夾雑物は含まれないのです。ガラス張りの音楽堂のステージ奥は残雪豊富な高原が広がるという豊かな自然。それに加えて木のホール。そんな素晴らしい環境の中カラマツで作られたチェンバロの雅であり柔らかな響きが、豊かな音となり伝わってきました。

プログラムはJ.S.バッハとその息子、C.P.Eバッハの作品に、チェンバロのための現代音楽を交えたものでした。開演までプログラムは明らかにされていなかったのです。大バッハJ.S.バッハ)からは平均律上巻1第1曲BWV846のプレリュード。そして同じく平均律上巻第22曲BWV867、こちらはプレリュードとフーガ。そしてトッカータBWV912。どれもが出だしの一音で感動に包まれました。すべて自分にとって聞き馴れている音楽ですが、改めて生のチェンバロで聴くと鳥肌が立つのです。また、譜面を真摯に読み込んでいると自ら言われる演奏者の解釈も豊かで、これまで自分がクラシックやロック、ソウルなど全てのジャンルの音楽の中で一番数多く回数を聞いてきたと思うBWV846のプレリュードなど、思わぬところでルバートや小さな休止が入り、はっ!とさせられました。そしてそんな展開を耳にして思うのです。なんという奥の深い音楽なのか、と。

ラストのトッカータBWV912もテンポの緩急を強調し、早いテンポでは左手と右手の間で立体感を構築し、緩いテンポではあや織りのような丁寧な音の積み重ねを聴かせていただきました。

クラシック音楽というと一般の方は一歩引いてしまい難しいものと思われる、しかしバッハや他のバロック音楽の素晴らしさ、親しみやすさを伝えていきたい」、というMCで自ら語られた演奏者さんのメッセージも良く伝わりました。同行した家内と次女も満喫したようです。次女は自分の影響もあり子供のころからバッハの簡易な曲をピアノで弾いていたこともあり、さすがに聴き所をわきまえていました。

唐松と白樺の高原で聴くチェンバロは夢の世界でした。素晴らしい高原の音楽堂です。空気も、音も、風景も。都会のシンフォニーホールよりも、ずっと自分の心に響くのです。ムジークフェラインザールのようです。さて次は何を聴きに行くかな・・来年のプログラムは何かな・・。早くも先の事で期待感が渦巻きます。


本日の演奏曲。ネットで見つけた音源です。今はピアノで演奏されるのが主流ですが、チェンバロで。今日の演奏はこれら20世紀を代表する奏者に勝るとも劣らないものでした。素晴らしい音楽に感謝するのです。

平均律BWV846 ヘルムート・ヴァルヒャのチェンバロ演奏にて https://www.youtube.com/watch?v=VtMyEVR7SRE
トッカータBWV912 トレヴァー・ピノックのチェンバロ演奏にて https://www.youtube.com/watch?v=u2vpdRJ7ONI
平均律BWV867 ケネス・ギルバートのチェンバロ演奏にて https://www.youtube.com/watch?v=U2lbdLZQOX4

 

写真:残雪豊かな海抜1600mの高原。木の音楽堂で奏でられる柔らかな音楽は澄んで透明な空気を揺るがし、リスナーの心を揺らすのだった。

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