日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

駅ソバシリーズ(9) 沼津駅 桃中軒

桃中軒と言えば三島駅です。駅弁迄手広く作っているのです。同社のわさび漬け小パックの入った幕の内弁当はさすが伊豆を感じさせるもので、新幹線車中での食事やに持ち帰りによく購入しました。同社が三島駅で営業している駅ソバは東海道線ホームにもありますが新幹線ホームのほうが馴染み深いかもしれません。自分も出張の際によく利用しました。かき揚げについては桜海老かき揚げとシラスのかき揚げが選べるのがいかにも静岡らしいです。

といいつつ今回は沼津駅。ここは東海道線の上りホーム上にしかなく、小さな店は5~6人立てば満員。オバサマ一人での完全なるワンオペ。さてここで、いつものリトマス試験紙である「かき揚げソバ」です。

まず、出汁が甘っ辛い関東風から少し異なり、少し薄口になったようです。しかし味はしっかりしています。何よりの違いはネギ。白ネギではなく、青ネギです。・・・そう、地理で習いましたね。静岡糸魚川構造線。いわゆるフォッサマグナの一部、ここが東日本と西日本の分水嶺。実際の文化の分水嶺はもっと西寄りだと思います。しかし静岡でも東部にあたる沼津ですでにこのような食の変化が見られることは非常に興味深い話です。ちょっと興奮するのです。

大き目の海老がくるりと入ったかき揚げは食べ応えもあります。また、ナルトが入っているのもとても嬉しい。そう、かけそばにナルトは似合います。味も良いですが、黒っぽい汁に浮かんでいる赤い渦巻きが、見た目だけとはいえだし汁に深みを与えているように思えます。なかなか駅そばにナルトはお目にかかれませんが、実際にあるのを見ると、これが無いと画竜点睛を欠くようにも思えます。

総じてとても美味しい駅ソバでした。登り熱海行が入線してくるたびに人の群れが増えます。ワンオペのおばさんは想定外に入って来たお客様にきちんと「ちょっとまってね、今手一杯です」と一言。そのせわしなさと、横溢するローカル感覚がとてもいい感じ。

今日は山の予定です。大き目の海老の入ったかき揚げと青ネギのソバでエネルギーチャージ完了です。さてこれから、アルプスを歩くのです。アルプスと言っても、「沼津アルプス」。しかし、あなどれませんよ。高低差も長さも。だからこそ、素晴らしい駅ソバの厄介になったのでした。今日も一言。「ご馳走様でした」

PS・話は変わりますが、「男はつらいよ・奮闘編(昭和46年)」をご覧いただいた方は、沼津駅南口から改札階段の光景は頭から離れていないでしょう。私もそのクチです。映画の中の沼津駅は永遠に頭に中から離れません。自分は何度ここで榊原るみを見て、渥美清犬塚弘柳家小さんを見たことか。もうその沼津駅は、とうに消え、少し古びた真新しいビルに囲まれていたのでした。

(2021年12月28日・記)

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