とある理由から長年使っていたキッチンテーブルをひっくり返してみました。すると、ふと、発見したのです。
テーブル裏面に鉛筆で字が書かれていたのです。四文字。「おねがい」とあります。
字は拙い。書いたのは長女かな、次女かな。このテーブルは結婚当初からあったものです。長女が中学に入る前に転勤したので、これを書いたのは長女が低学年だった頃ではないかと思うのです。当時は幼かった次女とは考えずらいです。
しかし、テーブルの裏に…。何のお願いだろう?
記憶の中の20年を遡ってみます。さしずめ、こんなところだと僕は考えるのです。
・ねえお父さん、言葉の暴力、止めて!
・ねえお父さん、思う通り行かなくなると、物を投げるのは止めて!
・ねえお父さん、更に怒りにかまけて自らの頭を壁に打ち付けるのは止めて!
・ねえお父さん、勉強しないからって漫画焼くの止めて!
・ねえお母さん、勉強しないからって教科書窓から外に投げるの止めて!
・ねえお母さん、勉強しないからって私をベランダの外にしめ出すのは止めて!
そんなすべての「止めて」の前に着く言葉が、この「おねがい」なのでしょう。いいのです、すべて身に覚えがあることですから。
こんなところに、秘するように「心の叫び」を書いていたのか・・。しかも、願い事が多すぎて、「おねがい」としか書けなかったのか。娘よ、すまない。
そんなに君たちを追い詰めたつもりはなかった。だけどね、分かってほしい・・・。僕らも若かったという事を。親としての成長過程でもあったのかもしれない。
自分の短気は生来のモノだから今も変わっていないよ。でも奥さんは一生懸命だったよ、君たちを育てるのにね。父を責めるのは良いけど、母はやめてね。
20年近く前に書かれたであろう「心の叫び」を前に、深く首を垂れるのです。いずれ彼女達にも、そんな懸命な時期が来るかもしれないな、と思うのです。彼らの前途に「幸あれ」。・・・ダメな僕が言えるのは、それだけです。