日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

バッハの作り上げた世界感

頭のリハビリの手段の一環(高次脳機能の回復)として行動療法士さんから与えられている課題です。それは、日経新聞のコラム(春秋)を読んで中身を理解して、紙に書き写す、という、一種の写経のようなものと思います。横書きのコラムは縦書きに、縦書きのコラムは横書きに書き写す。自分で咀嚼して書き写すのです。

それに加え自己流メニューの追加ですが、仕事で英語のコミュニケーションに取り組んでいた自分としては、その機能を損失したくないために、早朝の談話室でそれを頭の中で英文化しながら同時に声に出して模擬スピーチをしています。英語に関しては新しい表現などのインプットは皆無なので、過去に得ていたものを記憶の断片から拾い出して再構築していることになります。朝から朗々と声を出すのは気持ちが良いです。まだ日が明ける前です。

そんな風に頭を動かしながらヘッドフォンで、宇宙を幾何学的に表現したのではないか、と思える偉大な音楽家の音楽をエンドレスで聴いていると、変な話ですが、脳の細胞1つ1つに、神経シナプスの1本1本に、それが冴え渡ってしみこんでゆくことを実感します。本当に素晴らしい。

その音楽。バッハです。やはりバッハだよな。鍵盤(ハープシコード、オルガン、ピアノ)も、リュートも、小編成の管弦楽も、教会カンタータも、世俗カンタータも、全てが凄い。同時に疑問がわくのです。彼は誰のため、あるいは何のためにこんなに緻密で構築的な音楽を創りあげたのだろう?

寺社仏閣でお願い事をするのは日本人だけだそうです。キリスト教含めほかの宗教では、ただ自分の罪やエゴを許して下さいとなるそうです。なぜなら私たち人間は自分のフィルターを使ってしか物事をみられない。万物を素直に受け入れられない、そんな私をお許しください、ということらしいです。(これはヨガや精神統一、瞑想をやっているここで知り合った方から聞きました、)
キリスト教には「原罪」という言葉があり、勉強不足の自分には今ひとつ分かりませんが人間として生まれた以上必ず背負う重さ、かと理解してます。wikiなど調べると宗派や会派でもその理解は異なるようで言及していない派閥もあるともあり、簡単では無さそうです。自己流の理解をお許しください。しかしながら神を前にやはり自分の原罪を許してほしいという気持ちを素直に認め、それを許して欲しいという気持ちだと理解しています。

するとバッハの音楽は当然ながら他人に聴かせるためにではなく、神の使途として正しく生きたい、原罪を許して頂くために、自らのためにひたすら創作した。その結果宇宙の摂理を体現した偉大なる作品群を残したのではないか?

こう考えると。全てがスッキリ収まるように思っています。

本当に素晴らしい音楽を聴きながら。こうして日経コラムの文字を読んでコラム作者の意図を組む。そして自らも自分なりの想いをカタチにしていき、誰とも特定出来ぬ誰かに、いつかユニバーサルに伝えることが、何かバッハの作った世界に自分なりに近づく手段かもしれない、と思ったりもしています。

今日も素晴らしい日でした。(2021年4月5日・記)

写真: バッハが眠る、ゆかりの聖トーマス教会(独・ライプツィヒ、2007年2月訪問時に撮影)

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追記 : 
35年以上に及んで自分の好きな音楽の頂点でもあるバッハ、その中でも秀逸と感じる「平均律」(今回は上巻)から一番知られているもの(ピアノでやっています)のリンク、また、ハープシーコードやオルガンの中から各1曲、更に教会カンタータから、これまた大好きな1曲、リンクを入れます。
平均律は「原罪を許してもらう祈り」にしか聞こえないし、ハープシコードで演奏されているフーガの小品BWV950、また、オルガンのBWV542では対位法の神髄が感じられる。カンタータは聖書の世界を感じます。(自分は聖書をまじめに読んではいませんが大学がキリスト教(新教)系の学校したので必須科目でした。)いずれもネットで今回拾っているので、自分が35年以上愛聴していた演奏家のものではありませんことを申し添えます。
ピアノによる 平均律上巻1曲目
https://www.youtube.com/watch?v=sOYXQoMz7Gk
ハープシーコードによる 小品のフーガBWV950 
https://www.youtube.com/watch?v=R558FFvtlAY
オルガンによる BWV542
https://www.youtube.com/watch?v=tgDE3klkmtQ
教会カンタータ BWV26 あぁ如何にはかなき、如何に悲しき
https://www.youtube.com/watch?v=g_dPkcP62CA