日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

秋の夜長に聴く合唱曲

秋の夜長に

オーケストラ伴奏の合唱モノが好きです。複数声部の合唱でカノンなりフーガが形成されたら、もう頭が痺れます。

バッハやヘンデルハイドンモーツァルトも、そんな観点から聞くと好きな作品が多くて、日によって選ぶ曲に困るほどです。もちろん一曲を通せば歌手のソロも入るわけですが、そんな、オペラで言えばアリア的なパートももちろん好きです。

合唱によるこの手の音に初めて触れたのは社会人になってからでした。配属された部門に居た女性の先輩(その方は今でいう山ガールでした)は山と合唱を愛する方で、その方が参加されているアマチュアコーラスのコンサートを聴きに行ったのです。アマチュアコーラスの演奏会というか、それはむしろプロのオーケストラに合唱としてアマチュアコーラス団体が参加しているというべきものでした。

そこでの演目の一つが、ヘンデルの「メサイヤ」。例の「ハレルヤ」があまりに有名ですが、これを演奏していたのです。この中にあった「For unto us a child is born」という曲に、やられました。

オーケストラと掛け合う4声のコーラスが造り上げる立体的な空間。声楽によるこのような音楽に触れたことがなかったので、それはもう、人生観が変わるような感動をもたらしてくれたのです。声楽曲(合唱曲)を聴き始めるようになった、とても自分にとっても大切な曲です。バッハのカンタータやオラトリオ、モーツァルトの大ミサやレクイエム、戴冠式ブラームスのドイツレクイエム、運命の歌、Nanie、ブルックナーの教会音楽などを知ったのは、すべて、この演奏会のお陰でした。これらは今でも自分の中でかけがえのない音楽です。

そのアマチュアコーラスで歌ってた女性の先輩も、とても素敵でした。小柄な方でしたが、体を揺らしながら全力で歌われていました。人が一つの事に集中している姿はとても美しいものですね。仕事では業務全般の実務を仕切っている厳しい先輩でした。しかし岩も沢もこなしていたかなり本格的な山の話と、音楽の話になると、とても柔らかく、笑うと細い目がもっと細くなって、嬉しそうだったのです。

今でも散歩しながら、車を運転しながら、料理を作りながら、合唱モノを聴きます。そして激しく楽しんで感動します。願わくば、自分のこの中で歌ってみたい、そんな気持ちが湧くのです。あの先輩もコーラスがとても楽しかったのだろうな、と思うのです。

音楽って、本当に素晴らしいですね。ひたひたと冬が近づく秋の夜に、これらを聞いて時間を過ごす。何と素敵な事でしょう。音楽の神様に、感謝しかありません。そしてもう音信もなく連絡をとる術もないあの先輩がまだ歌っているのなら、是非に聴きに行きたいと思うのです。小さな黒いドレスで、一生懸命に歌われている事でしょう。

「For unto us a child is born」の映像を探しました。コリン・ディビス指揮ロンドン交響楽団の映像がありました。バロックそして古典派すらも古楽器演奏が今の主流なのでしょうか。しかし自分はこのような現代オーケストラによるもののほうが音として安心して聴けるのです。古い人間になりました。

https://www.youtube.com/watch?v=MS3vpAWW2Zc

おまけ。ハイドンの「天地創造」も実に素晴らしく好きな作品です。ヘンデルのような作品を書きたい、とハイドンが晩年に書き上げた力作と聞きます。大作ですがやはり合唱が好きなので、第2部の終曲を挙げます。ガブリエル・ウリエル・ラファエルの歌も素晴らしいですが、やはり導入部と最後を締める堂々とした合唱が、ものすごい迫力を伴って、胸に迫ります。

https://www.youtube.com/watch?v=M_7k6ABp2Sc

(2021年11月20日・記)