銀行に流れるブラームス
地元の駅の三井住友銀行のATMコーナーに行った際、聞き馴れた音楽が店内を流れていた。ブラームスのピアノ曲、間奏曲作品118-2だった。
濃厚で甘美なブラームスの音楽を聴きこんだのは大学生の頃だった。交響曲も協奏曲も、室内楽も声楽曲にも、いずれもドイツ風のロマンを感じた。多感でもあった大学生には「これは自分のための音楽だ」そんな思いでその作品に触れたのだった。そんな昔日が思い出される。
店内を流れていたのは誰の演奏だったのだろう。この曲は自分はグレン・グールドの1960年の録音を愛聴していたが、それを初めて聞いた時、それまで聞いてきたグールドの、バッハの楽曲の持つ構築美をきわめて透徹に引き出してきた、雄弁でテクニカルな演奏とは全く異なる、ロマンチックな演奏にややとまどった事を思い出した。
帰宅して改めてよく聞いたグールドの1960年の演奏に耳を傾ける。心のひだに染みているメロディだった。色々悩み内省的な日々をすごしていた学生時代の事が、折りたたんだ昔の手紙を開くかのようにゆっくりと思い出された。
しかし三井住友銀行、どんな趣味でブラームスの、しかもこんな晦渋な曲をBGMに選んだのだろう?・・・あなた、好きだねぇ、と、選曲担当者に会ってみたい気がした。
https://www.youtube.com/watch?v=Ls9FFgLJRBk
リンクの音源は Brahms: Intermezzo in A major (Op. 118-2), Glenn Gould (1960)
2020年12月11日記