日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

山にまつわる随想

スイセンの小径 津森山

山を歩く気持ち。自分を目一杯勇気づけて登る山もあれば、しっかりとした計画も立てずに気楽に歩く山もあるだろう。前者には革靴に35から50リットルに近いザックが伴侶になるし後者はナイロン靴に25リットルでも持て余しそうだ。 山麓の風景をのんびり味わい…

おそるべし千葉

仕事で頻繁に欧州・米州・中国と日本の間を行き来していた時代。2015年あたりまでだろうか。帰国便の成田へのアプローチは多くが九十九里海岸辺りから空港へ降下する。太平洋便ばかりでなく欧州便は阿武隈の山々を越えていったん太平洋上に出て旋回した。滑…

恩人の思い出 

雪が落ち着く季節。すぐに山麓には蕗の香りが高く足元にはワラビ。もう少し立てば田代に水芭蕉が見られるだろう。 こんな季節になると胸が躍る。春を迎えると空気も日に日に緩み水ぬるむことも感じるだろう。そんな和らぎそのものが魅力的ではあるが、胸が躍…

随想の風景・山の書との再会

徒歩・テレマークスキー・自転車など、人力で旅をすることを趣味として随分と長く時間が経った。数日間も旅をするような大げさなものではない。わずか一日でも住み慣れた環境を離れ、見知らぬ風景に出会い、知らない風に吹かれる。独りになり自己との対話を…

オイル・サーディンはありがたい?

オイル・サーディンと聞いてどう思うか? 「料理に便利だよね」と細君は言う。…そうだろうな、実際よくパスタに使うしね。 しかし特定の人種は、「いやー、嫌だよね。避けたいね。」と言う。その人種とは「山ヤ」と呼ばれる人々。オイル・サーディンという単…

山上の至福 鍋焼きうどん・鍋割山

転勤で静岡県東部の街にある事務所に通っていた頃の話だ。職場には「昼礼」という慣例があり、事務所の社員が持ち回りで、ちょっとした話をしたり、連絡事項の共有をしたりしていた。 ある時、入社2,3年目の自転車大好きな社員の番だった。「山の上で名物の…

「旅がらす」の想い

何かに熱中していて、ふと我に返る。「あれ、なぜ自分は今こんなことをやっているのだろう?」と自問自答が湧いてくる。そんなことが無いだろうか? 好きなことに取り組んでいるはずでもその思いは時々不意に顔を出す。取り組んでいることが肉体的に厳しけれ…

彼岸花の山

標高にしたら400mにも満たない小さな山歩きだった。 登り始めから植林帯で山頂はわずかに都心方面が開けている。再び植林帯で、山麓の温泉のあるリゾート施設のわずか手前でほんの少しの雑木林の道だった。 植林の山はあまり気持ちの良いものでもない。檜と…

山道具の補修・破れた登山パンツ

登山パンツは夏用、春秋用、秋冬用と季節と残雪の有無、登山する山の標高に応じて3種類を使っている。かつてはニッカボッカ―も使っていたが、あまりにレトロで最近は出陣機会はない。 春先のトレッキングで登山道に横たわっていた倒木に足を引っかけた。悪…

「ありがとう」という名刺

小田急線のとある駅にて。一日の登山を予定通り終えて、綿の様に疲れ果てて駅のベンチに座っていた。改札の前には小田急系列のスーパーマーケットがあり、そこで500㏄ロング缶のみを仕入れて、ごくりと三口。陶然としていた。今日の山は絞られた。自分の限界…

絞られた大倉尾根・塔ノ岳

丹沢主脈の表玄関と言えば塔ノ岳(海抜1491m)。ルートは幾つがあるがバス停のある大倉(海抜290m)からが一般的だろう。その標高差1200mは一日のアルバイトとしては自分にはきつい。日帰りの山では800m程度のルートを選ぶのだから。 このルート、大倉尾…

水芭蕉を見て

♪夏が来れば思い出す。遥かな尾瀬、遠い空♪ 尾瀬にも行ったことがないのに、子供心に地名と共に記憶に残ったメロディ。透明でいてはかなさや寂しさすら感じさせるその歌は、清冽な水や緑色の風が吹いているであろう遥かな楽園への、夢の架け橋だった。 そん…

暑い夏に日本一暑い町の山へ・太田市金山

陽炎がアスファルトから湧き上がる。路面にまいた水はすぐに蒸発、そんな光景が頭に勝手に浮かび上がる。それは埼玉県熊谷市であり、お隣の群馬県伊勢崎市、太田市であり、館林市でもあり。テレビのニュースでは毎夏報じられる。40度を超えるという気温の日…

無理をしない事です。ボルダリング挑戦

以前から気になっていた。オーバーハングの壁を人工のスタンスとホールドを頼りにスパイダーマンのように登る。ボルダリングだ。 もともとは、ヤマケイ誌などに記載されていた平山ユージあたりのヨセミテのフリークライミング写真。それを見て単純に驚嘆して…

六月の奥武蔵・秩父の低山2題 その2 蓑山

・蓑山(581m)埼玉県皆野町 2022年6月25日 前回の山からわずか一週間。その間になんと梅雨が明けてしまい、先週とは大違いの暑い山。今回は秩父鉄道の和銅黒谷駅が始点。もう退職してしまった前々職の会社の仲間たち4人で登る。 皆、くだんの会社は辞めてし…

六地蔵に何を想う

信州の名山・高妻山に登ったのは6月だった。雪はあまりないだろう、そんな思いで雪に対する備えもなく入山したのだ。昔から踏まれているルートはいったん戸隠山からの稜線にとりついて一不動の避難小屋に出る。そこから稜線を北北東に進み五地蔵山で90度向き…

大地に間借りも悪くない

先日虫干しした古いテントが話しかけてきた。 「折角ならこんなコンクリートの上でなくて土の上に張ってよ。」 そうか、ならば行くか。6月もほど近い日だ。気候も良くなったし、何よりも入梅前の好天だ。平日に車で二時間半も走ると意外に遠出ができるものだ…

35年間の相棒、愛すべき旅の家たち

梅雨入り前のひと時は湿気もさほどなく好い天気ですね。いや、しかし暑い位です。 キャンプ、35年以上やっています。始まりはバイクキャンプ。バイクは力持ちなので大き目のテントを200㏄のオフロードバイクに積んでは林道ツーリング。名もなき林道の片隅で…

森の聖母が棲む山 鍋倉山スキー行

鍋倉山(海抜1289m)の名前に接したのは20年以上前だろうか。 バックカントリースキー・山スキーは自分には「ネイチャースキー」というネーミングで入ってきた。それは急峻な山岳地帯をも活動の対象とするアルピニズムの一形態である山スキーよりも、雪の森…

信越トレイル山スキー 袴岳

GWは例年山スキーだ。今年は友人と信越トレイルの鍋倉山。となるともう一か所は何処にするか。 9年前の鍋倉山では野沢温泉スキー場から千曲川の七ケ巻集落へ尾根を下るというクラシックツアールートを絡ませた。それは上部にはルートファインディングの楽…

追憶の百名山を描く(7)・浅間山

●始めに: 日本百名山。深田久弥氏が選んだ百の名峰。山岳文学としても素晴らしい書だが、著者の意とは反して、このハントがブームになって久しいようだ。自分は特に完登は目指していない。技術的にも体力的にも出来ない山があると知っている。ただ良い指標…

娘からの挑戦状

入院中の話・・。 「父親よ、あーた入院で頭ボケてんじゃないの?活性化せよ。」と言わんばかりに長女から挑戦状が来た。 この娘とは、自分が山登りをしつけた?おかげか、山登りは苦にせず、これまでも百名山を含むいくつかの山に一緒に登ったし、登りたい…

都会にある里山にて

自分が住む街は東京23区を除くと市としての人口は日本で第一位という。2022年時点で人口370万人に近い大都市だ。 実際高台にある我が家のベランダから外を見る。丹沢・箱根・富士・奥多摩・秩父の山々は望めるものの、手元はあきれるほどの住宅と集合住宅で…

2年ぶりの「カチリ」 富士二ツ塚BC

「カチリ」。良い音だ。 テレマークスキーの3ピンビンディングを嵌める時はテレマークブーツの先端裏側の3つの穴をビンディングの3つの突起に嵌合させてから上からストックの石突でビンディングの抑え金具の先端を押し込む。その時に鳴る「この音」が好きだ…

山道具の歌・シールの補修とメンテ

スキーのシール。山スキーをやらない方には「???」かもしれません。 スキー板で登山、滑走。あるいは高原の散策。踵がガチガチに固定されているゲレンデ板でこれらをやろうとは思いません。逆ハの地で登るか、横に向いてエッジを立てて階段登高するか。い…

山道具の歌・旧友

いったい幾つの山の夜をこいつとともに過ごしたのだろう。 彼は少し気難しい。火をつけるのはコツが必要だ。チューブに入ったメタか、固形のエスビットか。はたまたティッシュをこより状にまいて、そこにスポイトで少しガソリンを垂らすか。このプレヒートさ…

楽しい季節のはずですが

雪が落ち着くころ・・3月末から5月まで。我ら山スキー愛好家にとっては最も楽しい季節です。自分の脚前は十分承知しているので、季節や選ぶ山には慎重です。安全重視で、滑りよりもむしろ歩きにもウェイトがあるルートが好きです。南八甲田がその最たる例か…

海辺の街・逗子へ

寒気の続く季節、寒さに負けて家の中に居るのも情けない。少し寝坊した朝。思い立って湘南の海を目指した。 逗子の街並みをじっくり歩いたことはない。数か月前のサイクリングで自宅から逗子へそして市内を走り、独特なスローな雰囲気を感じた。それは心地の…

今朝の北岳

今朝は外を歩く時間が遅く空気は霞っぽくなり光線の具合もイマイチでした。もう少し早い時間帯に歩かなくてはいけません。 自宅から見える「甲斐の白根」。堂々と続く北岳から間ノ岳の3000m級スカイラインと久しぶりにお会いしました。今年の2月3月には入院…

そしていつか 

「いきますよぉ。」 掛け声とともに苦しそうな吸引音とむせび音。 カーテン越しの向かいのベッド、辛そうだ。あぁサクションか。あれはきついな。自分自身が数か月前脳腫瘍を摘出した直後の集中治療室で何度も味わった苦痛。それを生々しく思い出す。 隣のベ…