日々これ好日

山や自然、音楽が好き。そんな私は色々な事が起きる日々の中で、好き日を過ごす事を考えています。

好きな音楽、音楽を巡る雑感

老いと円熟

年齢を経ると様々な運動機能が衰えてくる。晩年の父は歩けなくなり最後は老人施設で人生を閉じた。ずっと寝ているか車いすだった。歩行機能は失いたくないが老化には抗えない。少しでも機能を長く維持するためには普段から鍛錬が必要なのだろう。鍛錬と書く…

二時間の友人

中国地方のある街から新幹線に乗った。夏の西日が遠慮なくホームに差し込んで目がくらみそうだった。ホームに滑り込んだ車両の中は冷房が効いておりようやく一息ついた。少し遅れて大きな荷物を持った青年が乗ってきた。西洋人だった。彼は偶然にも自分の隣…

どうしたものか

とても音痴だ。すこし鼻の詰まったような声質がそこに加わり自分の歌など聞きたくもない。しかし子供時代からずっと音楽の授業での合唱が大好きだった。小学生では「気球に乗って何処までも」「夏の思い出」。中学高校になると「翼をください」「誰もいない…

演奏会ロス

友人が所属する吹奏楽団の演奏会を聴いてきた。年に2回定例演奏会がある。金峰山や茅ヶ岳、八ヶ岳に鳳凰山、北岳に甲斐駒。そんな名山が眼の前に広がる高原台地に木をふんだんに使った素敵なコンサートホールがある。海抜は700m程度だろうか。澄んだ空気が音…

図書の旅23 カラヤン幻論 裄野 條

・カラヤン幻論 裄野 條(ゆきのじょう) アルファベータ 2013年 自分が初めて自ら欲しくて手にレコード。小学校1,2年の頃だ。それは資生堂のテレビコマーシャルで流れていた壮大で優美な曲だった。どうしてもそれが欲しくてレコード店に行った。その店でうろ…

素敵な日曜日 探していたモーツァルト

あ、こんなところにあったのか。ずっと探していて、もうあきらめて探していた事すら忘れていたのに。そんな事は無いだろうか。どうせ大したものを探してはいないのだがそうして見つけたものは宝物になる。大切に、今度は忘れないように、と分かりやすい所に…

忘れ物

昔はすらすらできていたのに、暫くブランクがあると全く忘れて、何もできない事がある。 ライブハウスの予約もしていた。フライヤーも作ってあった。しかしその数か月前に中国で発生したコロナウィルスは瞬く間に日本にも上陸しすべての社会活動はほぼ停止し…

夢の国への招待状

吹奏楽の演奏会でホールに出かけた。県下でも有数の素晴らしい音響のホールだという。自分も何度も足を運んだいる。NHK交響楽団はここでも聴いた。NDR北ドイツ放送交響楽団もここだった。 サントリーホール、ミューザシンフォニーホール、昭和音大ホール、NH…

デビィへのワルツ

デビィへのワルツと書いてしまうとピンと来ない。スタンダードともいえるジャズピアノトリオの大傑作、ワルツ・フォー・デビーのことだ。 自分はジャズにはのめり込まなかったが流石にこの曲は知っている。いや、大好きで限りなく聞いた。演奏の途中に入る観…

怖くて手が出ない

SNSの画面に広告が出てくることはよくある話。多くは自分が調べたものに関しての商品やサービスについての案内だ。 先日はとうとう違う案内が来た。マイクロソフトのAI& GPT4アプリのインストール案内通知だった。調べてもいないのに何故だろう。余りに旬だ…

つまらない夢二題

つまらない話だが、夢がある。二つある。 ● 一つ目の夢。もう50年以上、途切れぬ夢。 一度で良いから列車を運転してみたい。 出来れば単行の気動車だ。山梨の小淵沢から長野の小諸を走る小海線は憧れる。小淵沢から野辺山迄はのどかな高原列車だ。一区間、い…

平均律クラヴィア曲集第1巻 大塚直哉演奏会

バッハの大作、平均律クラヴィア曲集第1巻の全曲の演奏会だった。通して生演奏を聴く機会はそうもない。矢も楯もたまらずに予約して良い席を取った。演者は大塚直哉氏。楽器はチェンバロ。 平均律クラヴィア曲集は第1巻と第2巻。上下になるがそれぞれ独立し…

系譜を見直す

老人ホームに父に会いに出かけた。老いた父親と自分の顔を共に見ながら、同行した娘はこう言った。「ますますジィジに顔が似てきたね。体つきも全て。」と。 若い頃の父はダサいという言葉が相応しぁった。髪の毛の枯れすすき、全体の体つきは柳原良平氏が描…

ゴルゴダへの道・ヨハネ受難曲演奏会

クリスチャンでない限り、イエス・キリストの生涯について造詣の深い方もあまりいないのではないだろうか。自分も詳しく知らない。なにせ目下のところ太陽・大地・空気、その総てが神々しいと思う程度で、言ってしまえば八百万の神の信者だろうか。つまると…

いつ開通するのか?

父親が昭和40年代に買った家は横浜市でも奥地にあった。相鉄線の駅もあったが家の近くの団地から横浜駅までの直通バスも走っていた。不便な場所だったが「地下鉄が走る」という話もあったらしい。しかし地下鉄は来ることもなく今もそこは不便な地だ。父はそ…

故郷を思いて

フランスという国は今でも多くの人にとり魅力的なのだろうか。藤田嗣治や高田賢三など同地で名声を得た日本人も多い。パリコレのランウェイを歩くことはモデルにとり最高の名誉だろうしコンセルヴァトワールは音楽を志すものにとり憧れだ。料理の世界でもシ…

図書の旅4・グレン・グールド 孤独のアリア(ミシェル・シュネーデル)

●「グレン・グールド 孤独のアリア」ミシェル・シュネーデル著。千葉文雄訳。ちくま文庫 1991年 信者とも言われるほどの根強いファンが未だに多くいるピアニスト・グレングールド(Glenn Gould 1932-1982)。脂の乗った32歳にしてコンサートからドロップアウ…

技あり?一本?スーパーの音楽

たいがいスーパーマーケットでは、有名な曲(ビートルズや80年辺りの洋楽)などをキーボード主体やオーケストレーションで編曲した、少しがっかりするチープな音楽が流れていたりする。版権が絡むのだろうか、オリジナルの音源を聴く事もない。・・・。 しか…

ユーミンの歌世界を自転車で・天気雨と相模線

相模線という鉄道路線を知っている方はやはり「鉄分豊富」な人だろう。神奈川県では数少ない単線の鉄道は相模原市の北部から湘南の町まで相模川に沿って南北に走っている。今でこそ電化はされたが自分が学生の頃はディーゼルエンジンをガラガラと唸らせた気…

大きな流れの一点

山の斜面にある神社の境内だった。近所なのに普段歩く道から外れていることもあり、そこに足を踏み入れたのは初めてだったかもしれない。ヘッドフォンをして歩く朝のウォーキングはいつもと違うルートだった。 築60年、それ以上か。自分よりもずっと年上だろ…

熱意の塊

年末になると何故か耳にすることが多いベートーヴェンの交響曲第九番。単に「ダイク」と呼ばれる。最終楽章の中のほんの一部に過ぎない合唱「歓喜の歌」のみが街に流れ電波に乗るが、第1楽章から緩徐楽章もすべてを通して綿密。非の打ち所がない。第一楽章か…

探しものは何ですか?

♪探しものは何ですか?見つけにくいものですか?♪ はい、林の中も谷の底も調べた。さすがに鞄の中も机の中はあり得ないので止めておいた。…まだまだ探す気だ。 全く手元も定まらないので、打球は左右に思うままに散ってゆく。だから右の林の間を、左の谷間を…

ザルツブルグへの旅行

細君と二人ザルツブルクを旅行した。オーストリア・アルプスが近くに見える。憧れの街だった。明るい陽光でも湿気はない、それは典型的な中部ヨーロッパの夏だった。 旅の目的はもちろん「ザルツブルク音楽祭」。100年以上の歴史を誇る世界最大の音楽祭だろ…

贅沢な泥棒・放送局オーケストラNDRとNHK

世にオーケストラは沢山ある。名高いウィーン・フィルやシュターツカペレ・ドレスデンなどは歌劇場の専属オーケストラ。ウィーン・フィルと双璧をなすベルリン・フィル、そしてライプツィヒ・ゲヴァントハウスなどは自主運営のオーケストラ。そして更には放…

旅の風景・分岐線

ゆっくりとランドナーを走らせる。目的地の港町は近いのか潮の香りがする。一時停止、踏切だ。 それは目を奪う風景だった。単線のレールがまっすぐに伸びていく。そしてそこから一本の単線レールが頼りなさそうに分岐していくのだった。 単線とはいえ前者の…

素敵な一日 - 無理をせぬこと

久しぶりにジムで汗をかいた。少し遠ざかっていたのは何故だろう。メニューがきつかったのだろうか。会社員時代は週2回、1時間のコース。筋トレから初めて有酸素。単調な会社生活の中で格好のストレス解消だった。会社を辞めてからも、週に1回は行く事にして…

手のひらの魔法

だらりとしていた両手をさっと上げる。全楽器が音を出すポジションに着く。この一瞬は緊張感と期待が重なる時間。すでに開演ベルの前まで楽屋裏で気ままになっていた幾多の旋律で期待が渦巻いているのだから、ここで自分も緊張は頂点に達する。 緩く、柔らか…

さやえんどう

昼飯にタンメンを作ろうとしていた。 我が家のタンメンは賞味期限切れの野菜の処理を兼ねるので何でも入ってしまう。キクラゲなどのあれば良いな、という具も、棚や冷蔵庫に残っていない限りは逆に入らない。モヤシばかりはそれがないと成立しないので都度買…

秋の贈り物 ツィマーマン、ヘルツァーのブラームス

秋の夜長はウィスキーをロックで片手に、チビチビとやりながら好きな音楽を楽しむ。そこに薪ストーブでもありぱちりと火がはぜればより素晴らしい立役者だが、生憎自分の住む地は数日来の寒さも戻り、Tシャツ一枚でも過ごせる夕べとなった。薪ストーブなどの…

秋の夜長にフランス音楽 サンサーンス交響曲第3番

クラシック音楽と言うと「なんだかめんどくさそう」と構えてしまう人が多いとしたら残念だ。自分の入り口はバッハの幾何学的な対位法。そこからモーツァルトで無邪気さの持つ明るさと寂しさを感じ、ブラームスやシューマンでの淡く・濃く燃えるロマンの愁い…